政府は何を目指しているのか

今のエネルギー政策は、何を目指しているのか
日本の貿易収支が、今年後半に入り急速に悪化しています。
2026年上半期の貿易収支は黒字でした。
しかし6月には赤字に転じ、7月には赤字幅が拡大しました。8月の貿易統計でも約1.1兆円の赤字となっています。
その大きな要因の一つが、エネルギー価格の上昇です。
7月には、原粗油の輸入量が前年同月比5.5%増だったのに対し、輸入額は実に87.8%も増加しました。
8月も原油の輸入量が3.6%増だったのに対し、輸入額は58.7%も増えています。
つまり、日本が必要とするエネルギーの量が突然何倍にも増えたわけではありません。
海外から購入するエネルギーの価格が大きく上昇し、これに為替相場の影響も加わって、日本の輸入額を膨らませているのです。
日本はエネルギーを海外に依存している
日本は資源の多くを海外に依存しています。
石油、天然ガス、石炭。
私たちの暮らしや産業を支えるエネルギーのかなりの部分を、海外から買っています。
この問題は、これまでの政権も認識してきたはずです。東日本大震災の直後には節電の動きも広がりましたが、徐々に日常が戻り、私たちの危機意識も薄れていったように思います。
しかし、日本のエネルギー供給が海外に大きく依存するという脆弱な構造は、今も残っています。
そして今回、国際情勢が変わり、原油や天然ガスの価格が上昇し、少なからず影響が出ています。
輸入額がさらに増え、電気やガス、ガソリンなどの価格が上がる。
それに従って企業の生産コストが上がり、それが様々な商品の価格にも影響する。
海外に支払う金額も増え、貿易収支は悪化します。
エネルギー問題は、物価、経済、産業、貿易、外交、安全保障、そして私たちの暮らしまで、すべてにつながっています。
電力が足りれば、それでよいのでしょうか
政府は2026年夏について、全国で安定供給に最低限必要とされる電力の予備率3%を確保できるとして、節電要請を行っていません。
電力が供給できるから節電を要請しないという判断は、現状の国際情勢やエネルギーの調達事情を考えれば、理解し難いことです。
本当にこれで良いのでしょうか。
海外から購入するエネルギー価格が大幅に上昇した結果、電気やガスの料金が上昇するため、政府は7月から9月まで電気・ガス料金への支援も行っています。
つまり、高くなったエネルギーを海外から購入し、その結果上昇する国民の料金負担を、今度は国の財政、即ち税金で軽減していくとしているのです。
無理な節電を求めるべきではないかも知れません。しかし、無駄なエネルギー消費を減らすことと、生活や健康に必要なエネルギーまで我慢することとは違います。
より少ないエネルギーで同じ生活や生産活動を可能にする取り組みは、短期・中期・長期のそれぞれで考えられるでしょう。
ガソリンの補助金などは産業界には効果的かも知れませんが、エネルギー節約の視点では逆方向に働く可能性もあります。本当に必要でしょうか。
また、住宅や建物の断熱性能を高めたり、設備や機器の効率を上げたり、産業全体のエネルギー効率を高める。こういったことは既にやっていることかも知れませんが、一層加速させることも考えられるでしょう。
海外から高いエネルギーを買い続けながら、その価格上昇分を補助金で軽減する。
政府は、なぜ今、その方法を選ぶのでしょうか。ほかの方法と比較して妥当だとする根拠は、示されているのでしょうか。
海外からエネルギーを購入しなければならない構造からの脱却ができていないのであれば、できるだけエネルギーを節約する、あるいは消費効率を高める方向性を、もっと明確に示すべきではないでしょうか。
原発か、再生可能エネルギーか、だけではない
エネルギー問題は、原子力発電に賛成か反対かという単純な話ではありません。
原子力、再生可能エネルギー、火力発電等、どのような電源構成にするのかに始まり、省エネルギー、エネルギー自給率、海外からの調達先などの要素に加え、価格、安全性、環境への影響、産業競争力、外交、安全保障などを同時に考慮しなければなりません。
これらを考え合わせると、私は今のエネルギー政策に強い不安を感じます。
政府として考えがあってのことであれば、それを詳細ではなくとも説明する責任があると思います。
そしてその説明には、消費税減税などの財政政策が円相場に与え得る影響、それに伴う輸入エネルギーコストへの影響、国内のインフレや物価への影響なども含まれていなければなりません。
消費税減税によって家計の負担を軽くしようとしても、仮にそれが円安圧力の一因となり、輸入エネルギーのコストを押し上げるのであれば、別のところで家計や企業の負担を増やす可能性があります。
もちろん、為替相場は消費税減税だけで決まるものではありません。だからこそ、政府はこうした影響をどう見込んでいるのか、それぞれの政策をどう整合させようとしているのかを説明すべきだと思います。
そして、私たちは、この政府の説明をしっかりと見ていかなければならないでしょう。
政府は、今、何をしようとしているのでしょうか
政府にもエネルギー基本計画があります。
そこには、安定供給、経済性、環境、安全性など様々な目標が掲げられています。
政府自身、日本が化石燃料の多くを海外に依存していることを、エネルギー安全保障上の問題として認識しています。
それにもかかわらず、今、政府が行っていることを見ていると、何を目指しているのかが私には見えてきません。
エネルギーの輸入価格が高騰し、貿易収支が悪化しているにも拘わらず、政府は電気・ガス料金への補助を行っている。一方で、電力は供給可能として、節電要請は行わない。
一体、何がしたいのだろうか。
輸入エネルギーへの依存を減らそうとしているとも思えず、海外からの調達量を維持しながら、価格上昇による国民の負担を財政で抑えようとしているように思えますが、それは一時凌ぎでなくて何なのでしょう。
今の価格高騰は一時的なものと考える何か根拠があるのでしょうか。
私には長期化する、あるいは構造的な問題のように思えてなりません。
補助金については国民から徴収した税金を使っているのですから、長期に続けるのであれば、その財源をどう確保するのかという問題が残ります。
今こそ国を挙げて省エネルギーの機運を高め、国民が一致団結してエネルギーのあり方を考え直すタイミングではないのかと思います。
私には、政府の考え方が全く見えてきません。
もちろん、個々の政策については、それぞれ説明がなされているのでしょう。
しかし、私が知りたいのは、それらを個別に説明することではありません。
政府は今、何を問題の中心と捉え、何を目的として、これらの政策を同時に進めようとしているのでしょうか。
エネルギー基本計画に目標が書かれていることだけでは、目の前で行われている政策の意味を理解することはできません。
現在の国際情勢や経済状況を踏まえ、政府は何をしようとしているのか。
今の政府は、政府が行おうとしていることの意味を、国民が理解し、判断できるように説明する責任があります。

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